自然ねっと自然と人とのコミュニケーション自然ねっと。
HOME 自然を食べる 自然と働く 自然を楽しむ
「食事・宿泊場所」と「労働力」を交換する
WWOOF日本
みなさんは WWOOF(ウーフ)という言葉を耳にしたことはありますか?
WWOOFとは、Willing Workers On Organic Farms の略で、イギリスから始まった有機農家と労働者を結ぶシステムです。
日本でも2002年に星野紀代子、グレンバーンズ夫妻が中心となって活動を開始し、「食事」と「宿泊場所」を提供するホスト(有機農家)と「労力」を提供するウーファー(労働者)を取り持つ橋渡し役を担っています。
そこで、今回はWWOOF日本の星野紀代子さんにお話を伺いました。
有機農家で働きたい人たち
自然ねっと事務局(以下自然ねっと)
  まずはじめに、ウーフのしくみを簡単にご説明いただきたいのですが。
星野さん
  写真しくみはとても簡単です。「食事・宿泊場所」と「労働力」を交換するというのがWWOOFです。お金のやりとりはありません。
「ウーファー」という働き手と、働き手を受け入れる「ホスト」がお互いにできるものを出し合うものです。ホストの核になるのは、有機農家で、ウーファーは、働けるものはだれでもなれます。Willing Workers On Organic Farmsの頭文字をとってWWOOF(ウーフ)と呼ぶのですが、直訳は、「有機農家で働きたい人たち」といったところですね。
自然ねっと
  なるほど。常にギブアンドテイクの関係で成り立っているという訳ですね。
このウーフのしくみですが、週末に都会での情報と田舎の生活の知恵を伝えあうというシステムとしてイギリスで生まれたのが始まりだそうですね。その後世界各国で広まったそうですが、日本で始めようと思われた動機は何だったのでしょうか?
星野さん
  10年ほど前に、自然に沿った生き方に目を向けていた時に、オーストラリアでWWOOFを知り、深く感じ入ったのがきっかけでした。そのころは、WWOOFはオーストラリアでもそれほど盛んではありませんでしたが、夫(グレンバーンズ)は、自分たちが日本で広めていかなければならない、という使命感を持ってしまいました。
自然ねっと
 

その使命感が書籍*を出すまでに至ってしまったという訳ですね。(*編集後記参照)

キーワードは、「有機」「自然」「環境」「人との交流」
自然ねっと
 

次にウーファー、ホストについておうかがいします。
現在はどのくらい(人数)の方が、ウーファー、ホストとして登録されているのでしょうか?

星野さん
  ウーファーとして500人ほどが登録しました。ウーファーの半分が日本人で、残りが海外から来る人たちです。海外では、欧米からが多く、アメリカがまず一番、その次が、イギリス、そしてオーストラリア、カナダと続きます。登録ホストは、少し増え40軒近くになりましたね。
自然ねっと
  (食事と宿泊場所を提供する)ホストのメリットはどんなところですか?
星野さん
  まず細かい作業が多く、人手が必要であり、それほど経費をかけていられない有機農家にとっては、なんといっても無償で労働力が手にはいることですね。
そして、なかなか外に出られない状況にあり自分たちは動けないが、日本各地、世界各国から多様の考え方、文化を持った人たちが遠くからはるばる来てくれ、自分の家の中で旅を感じられ、いろいろな人に会うことで刺激を得られる、ということが大きいんではと思います。
自然ねっと
  まさしく「農を通じた旅」という感じですね。では、(労働者である)ウーファーについてはどうですか?
星野さん
  ウーファーたちは、作業を通じて、技術や知識をからだを動かしながら身につけることができること、ホストの真摯な生き方に触れられること、観光客としてではなく、ホストと同じ目線で生活できること、などがほかでは得られないことはたくさんありますね。
自然ねっと
  なるほど。確かに実際の現場で働けるというのは、観光では味わえない体験ですね。
これからそのような体験をしてみたいという人も多いと思いますが、実際にウーファー、ホストとして登録されている方はどのような方が多いのでしょうか?
星野さん
  日本人ウーファーと、外国人ウーファーでまず大きく分けられるかもしれません。日本人ウーファーは、「有機農業」を学びたい、「会社を退職して自給自足を」という方たちが多いです。外国人ウーファーでは、有機を勉強したいという人はいますが「ほんとうの日本を知ることができ、じかに日本人と生活でき、お金がかからない」ということでWWOOFする人が多いです。そのほか、どちらともに共通している点では、都会に住んでいては、体がおかしくなる、この生活はちょっと変だ、と感じている日本人や、東京や大阪などの都市で働く外国人たちが、からだと心を元に戻すため、週末や、休暇にWWOOFを利用していることです。
男女比率はちょうど半々です。

ホストは現在北海道から九州まで各地に点在しています。深みのあるいい生き方をしているホストばかりです。有機農家が中心ですが、自然食品店、自然療法治療院、ペンション、フリースクール、農家レストラン、木炭製造兼オートキャンプ場、環境教育センターなどがあります。ホストのキーワードは、「有機」「自然」「環境」「人との交流」のいずれかもっているところです。
自然ねっと
  週末や休暇を使って気軽に参加することもできる訳ですね。
ところで、国自体の大きさもあると思いますが、オーストラリア1600件、カナダ450件と言う海外のホストと比較すると、まだまだ日本ではホストの数が少ないように思えます。WWOOFの活動が盛んになるにつれて、ホストの数も増やしていく必要があると思いますが、それについて考えていることはありますか?
星野さん
  無理にではなく、人を受け入れる気持ちのあるところを少しずつ増やしていきたいと思っています。日本の人は、お客さんにはおもてなし、と気遣いの心を持つ国民性があります。大変すばらしいことですが、いつも気を張っているとWWOOFは長く続きませんので、ウーファー(働き手)は身内と思って下さい、ホストはありのままでいてください、食事はごく普通で、といつもお願いしています。ほんとうにそれをウーファーは期待しています。
身近なところでWWOOFできるように、各都道府県すべてに数軒はホストを作っていきたいと思っています。
自然ねっと
  活動自体も自然体でということですね。
有機農業を知るには、消費者が自分たちで少しでも野菜を作ってみることが一番
自然ねっと
  最後にWWOOFの理念として挙げられる「有機農業」についてお聞きします。
有機農業という言葉は聞き慣れたものなのですが、通常の農業(慣行農業)との違いは何なんでしょうか?
星野さん
  農薬を使わず、化学肥料を使わない農業が有機農業です。手で虫をつぶしたり、虫を寄せつけない植物を植えたり、肥料は落ち葉や鶏、牛、豚の糞尿を使用したりします。その反対の、農薬を使い、化学肥料を使う農業が慣行農業です。どんなものが農薬か、化学肥料かは、お近くのホームセンターや園芸店に行くとわかります。きれいにパッケージされて、化粧品のようで、農薬や化学肥料という毒々しさは感じられず驚かれるかもしれません。
自然ねっと
  日本ではまだ「有機農業」が農業の主流とは言えないと思いますが、有機農業を広く世間に広めるためにはどのような活動や対処が必要だと思われますか?
星野さん
  農薬や化学肥料を使わないでできる野菜がどれぐらい手間ひまかかるか、どのようにできるのか、食べる人たちが理解する必要があります。食べ物にたいするありがたみを感じ、ひとりひとりの考え方を変えていくことで、作る方もこだわっていこうという意識が芽生えていくと思います。まずは、消費者が自分たちで少しでも野菜を作ってみることが一番てっとりばやい方法かもしれません。WWOOF体験することでもそれがよくわかるはずです。
ほかに、「複合汚染」(有吉佐和子)などの本を読むと、一気に考え方が変わると思います。
自然ねっと
  どうもありがとうございました。
これを機にウーファーに登録してみようと思われた方々にメッセージがあればお願いします。
星野さん
  毎日パソコンで手を動かすばかり、会社の通勤でアスファルトの上しか歩いていない人は、ぜひWWOOFを経験してみてください。違う生き方、考え方に触れ、心がうきうきと弾み、からだのひとつひとつの細胞が喜んでいるような感じを受けると思います。

働き手のウーファーもですが、ホストを募集しています。有機農家だけではなく、「有機」「自然」「環境」「人との交流」ということに関連したことをされているところであれば、WWOOFホストになれます。ご興味ある方がいたらぜひ、電子メール info@wwoofjapan.com 星野紀代子までご連絡ください。
WWOOF 日本 ウェブサイトhttp://www.wwoofjapan.com
編 集 後 記
今回の取材にあたって、WWOOF日本の星野紀代子さん、グレン・バーンズさんご夫妻が執筆された書籍「泥だらけのスローライフ 自分さがしの農の旅」(実業之日本社)を拝読させていただきました。書籍の中にはウーファー、ホストによるルポが綴られていて、WWOOFのしくみやそれを通じた苦悩や楽しさが伝わってきました。WWOOFは日本でも海外でも使えるシステムのようですので、海外でのファームステイや日本での農業体験に興味がある方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

「泥だらけのスローライフ 自分さがしの農の旅」(実業之日本社)1,500円
前半はウーファーやホストの姿に迫ったルポ、後半では実際に「自給自足」や「就農」に関するノウハウなどの実用情報が載っており、WWOOFに興味がある人だけでなく、自然や有機農業に興味がある人全般にお薦めできる一冊です。
本についての詳細は実業之日本社「Webギンザ」をご覧ください。
2003年取材
Back